カテゴリ
以前の記事
2017年 02月 2013年 04月 2012年 06月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 外部リンク
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
クリスティーヌ・ワレフスカ チェロコンサートを聴いて
だいぶ前の話になるが、「日本では忘れられた女流チェリスト、クリスティーヌ・ワレフスカ」として、4月28日付け日経新聞で紹介されたチェリストのコンサートに出かけた。 6月6日銀座十字屋ホールで開かれたサロンコンサートは演奏者と聴き手が膝突き合わせるかのように、会場が人で埋まっていた。 バッハのアリオーソから始まったが、何かしっくりこない感じで、いかにも弾きにくそうにしている。 おそらく狭い上に天井が低く、響きが足りない会場のせいではないかと思ったが、前宣伝が本当だったのかとちょっと不安になった。 しかし休憩前に弾かれた恩師であり天才チェリストであった、ボロニーニの作品あたりから徐々に乗ってきた。 チェロの技術的なことは良く分からないが、ボロニーニの「エコ・セレナーデ」でのピッチカートのテクニックに驚かされる。 楽器も持ち前の力を発揮して鳴り出してきていた。 2部はサンサーンスの有名な白鳥やラヴェルの小品をハープと、ピアソラの作品、ショパンなどをピアノとのアンサンブルで、楽しめるプログラムだった。 チェロの持つ歌う性質と彼女の曲に対する 洞察力、構成力とそれを実現するテクニックが大きなスケールとなって迫って来て会場は熱気に包まれる。 アンコールの中の一曲は映画「戦場のピアニスト」で有名になった、ショパン遺作のノクターン。 チェロで奏されたこの曲はテンポも遅めで、彫の深い表情がピアノとは違う趣だった。弾き終わると会場全体が一瞬息を呑んだようにシンとなった。 ショパンの意図したところを超えて、ベートーヴェンの緩やかな楽章に聴かれるもっと求心的な表現になっていた。もちろん作曲家の意図を充分考慮した上で、その内包するものを引き出したとも言えるだろう。 ワレフスカ自身がこの曲から聴き取った、祈りだったのだろうか。 「こんなに重厚で、感動的な曲だったっけ? ショパンが聴いたらなんと言っただろう」などと思ったりもした。 彼女の演奏は今を時めくコンクール覇者達のものとは違う。 もっと土臭く、おおらかで人間的な温もりを持っている。それでいて抑制の効いた気品もある。 一時代前の大家達のスタイルを受け継だ演奏スタイルは今や貴重なものかもしれない。 デジタル化が進んで芸術も変わりつつあるように思うが、生きている実感の伝わるものであって欲しい。 演奏の合間に話されたボロニーニの逸話「ピアニストのルビンシュタイン達と煙草の煙が立ち込める酒場で演奏したりしていたこと」若い頃はボクサーでもあった事など、音楽家のイメージを覆すお話もワクワクする楽しい一夜だった。 演奏会の後に振る舞われたワインやお菓子などを「やっぱり銀座ねえ」などと言いながら堪能させて頂いた。 ワレフスカは新聞の情報によると、天才女流チェリストとして知られたジャックリーヌ・デュプレと双璧だと言われ、デビュー当時天才の名を欲しい儘にしていたそうだ。 しかし、ある時南米での演奏旅行の際にすっかりその地に魅せられて、活動の場をアルゼンチンを中心に、南米に移してしまったとか。 演奏活動の場とスタイルを変え、商業主義から離れたことによって日本では忘れられた存在になっていたようだ。 記事の出た日にチケット販売所に問い合わせたところ「今月末ぐらいまで大丈夫ですよ」との返事に、音楽仲間と聴ききに行こうと約束した。 だが翌朝電話をかけると「昨日は電話が鳴りっぱなしで、完売しました」と言われビックリ。 新聞記事となった途端に、東京での皮切りのコンサート、その後の武蔵野文化会館も完売となったとか。メディアの宣伝力は大したものだ。 今回のコンサートツアーは滅多にない経緯をたどって開かれたものだ。 アマチュアチェリストである若い歯医者さんとその大勢の仲間の熱意と行動によって実現した。 こんなコンサートがもっと増えたら良いのに、そしてこれを機に再度の日本公演が実現したらと久々に熱い想いを抱いて会場を後にした。
by akoy28
| 2010-06-26 14:51
| 音楽
|
ファン申請 |
||